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猫を抱いて象と泳ぐ [本]

小川洋子さんの作品は、とてもシンプルだ。
必要最小限の言葉で、決して多くを語らず、それでいて表情豊かな世界を描きだそうとしている感じがする。

今回の作品では、チェスがテーマになっている。
リトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる少年。
彼は、生まれた時、まるで口をきく必要がないから、と言わんばかりに、口がふさがった状態で産まれてきた。
手術によって、口は開かれ、話すことも食べることも普通にできるようになったが、彼は必要なこと以外は話さない。
それは、話す必要がないのではなく、彼が話したい事は、全てチェスの盤上で話せるからだ。

リトル・アリョーヒンのチェスは、まるで音楽を奏でるかのように、美しい手で構成される。
相手がどんな相手であっても、彼は美しいチェスをする。
対戦した相手は、生涯、他の相手では経験し得ないチェスをすることができるのだ。

リトル・アリョーヒンがチェスで美しい音楽を奏でるように、作者は、この作品を選び抜いた言葉で、シンプルに美しい音楽を奏でているようだ。


猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: 単行本



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